第七章
リビングを出て、宛てもなく廊下を進む。
フォックスの隣を歩きながら、スピカは警戒し辺りに視線を走らせて。フォックスも、拳銃を構えながら慎重に歩を進める。
パキッ
「わ……、何か踏んだみたい」
ローナは不意に立ち止まり、その場に屈み込む。ブーツで踏んだそれは紛れもなく、真上の割れた照明の硝子の欠片で。
「……やっぱし侵入してるのかぁ」
そうなれば戦う他あるまい。
小さく溜め息を洩らし、先を歩く二人の後を追いかけようとしたその時だった。
「駄ぁ目」
そんな声と同時に後ろから抱き締められ、ローナは足を止める。聞き覚えのある声に、不思議と体は硬直して動かなかった。
「数は少ない方がいいんだって……」
小さく笑みを溢し、
「ベンゼル様が」
「かっ」
その名を呼ぼうとしたその時、視界は暗黒の闇に覆われて。台詞が、途切れた。