第七章



――遡ること、二時間前のエックス邸。


「おにぃ、早く帰ってくるといいね」

窓の外をじっと眺めながら、ピチカはぽつりと呟いて。不安で、だけどどうすることも出来ない彼女を、兄であるスピカは慰める言葉も見つからず、黙っていた。

「大丈夫大丈夫っ!」

こんな状況であるにも関わらず、ローナは明るい声音で代わりに答えて。

「何てったってネロがいますから!」
「心配を煽るだけだわ」
「じ、自分の兄に対して……何て奴っ」

えへんと胸を張ったのも束の間、シフォンがぽつりと口を挟むと、ローナは思わず身を引いてしまい。――妹がこれでは、兄のネロは案外苦労人なんだな。

「何や変なんばっかり向こう行ってもうたな。リオンとか、リオンとか」

指折り数えるドンキーに、

「後、リオンだな」
「待て。だったらリオンも」

口々にフォックス、ファルコ。

「その辺にしたれー」
「お前が言ったんだろ!」

ドンキーが呼びかけると、フォックスとファルコは声を揃えて突っ込み。スピカもピチカも、それがおかしくて笑い出した。

誰もが釣られて笑い合う中、ウルフはその様子を傍目から黙って見守っていて。
 
 
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