第六章
――暗闇は。
今の状況下でどれだけ危険か。それはフォックス達だって十分理解しているはず。
暗闇の中、光を嫌うダークシャドウは活発になる。現在は夜……寝るから電気を消すにしても、そんなのは寝室だけで十分だ。
パキッ
また、硝子の破片を踏んだようだがいちいち確かめていられない。照明はやはり、誰かが消したのではなく“消された”。
ダークシャドウの侵入を許した可能性がある。ルーティは息を呑んで。
――人間、か。まだ残っていたのか。
ベンゼルのその台詞だけが記憶の中から抜粋され、繰り返される。ルーティは思わず、足を止めて。……まさか。
まさか。
「皆っ……!」
そんなことは絶対に、あってはいけない。
どうか無事でいて。無我夢中で走るルーティの目に、普段あまり使わない大ホールの扉が飛び込む。扉はほんの少しだけ開いていて、隙間からは光が漏れている。
「ウルフ!」
咄嗟にパートナーである彼の名を呼んで、扉を力強く押し開き、飛び込む。
その名を呼ばれた男は。
「……ぁ」
大ホールの中心。ゆっくりと振り向いた。