第六章
「あんた、僕と兄さんの世界を」
クレイジーは顔を顰めて。
ベンゼルは乗っていた瓦礫の上から飛び降りると、地面に片足ずつ着地して。
「望んだ世界ではない。そうだろう?」
にこり、と愛らしく笑いながら。
「君達が理想とする世界に造り替える、チャンスではないか。ほら、今なら」
ベンゼルは唇に人差し指を添えて。
「誰も、何も言わない」
苛立ちを感じたのは全員がそうだった。
ルーティが駆け出すよりも先に、飛び出したのはネロだった。迫り来る殺気にベンゼルはただ、目だけを向けていて。
「くっ」
炎を纏った拳で殴りかかる。しかし、ベンゼルはその場から一歩も動くことはなく、片手でその拳を受け止めていて。
「人間、か。まだ残っていたのか」
ベンゼルの顔から、笑みが消失する。