お頼み申す!
予想以上の反応だった。
「お、脅かさないでほしいで御座る!」
「それはこっちの台詞だよ!」
ごもっともである。
「だ、大体揃いも揃って何をこそこそと試聴していたので御座るか」
言うや否や二人の顔色が変わった。
「きっ君には関係ない!」
「そうだよ!」
「関係ないも何もこの店に一度足を踏み入れたからには同志で御座ろう!」
「一緒にしないでよ!」
騒げばそれだけ注目も浴びる。何より目立ちたくはないと思っていただけあって視線を受けると案の定二人は狼狽えた。その隙ミカゲは素早くシュルクのヘッドホンを奪い取ってしまうと。
「あっ」
自分の頭に被せて――試聴開始。
「み、ミカゲ」
今すぐ引っぺがしてやりたいところだが不運なことに店員が近くで商品の整理を始めてしまった。……どうしよう。
あれはただのCDじゃなくて。
「……成る程」
小さく呟いてヘッドホンを外す。
「世に聞く“ボーイズラブ”で御座るな」
「う、うん」
「題名はともかく中性的な声でなかなか良かったで御座る」
……なんか評価されてしまった。
どう反応するべきか。顔が熱くなるのを感じながらマークがそろりと遠慮がちに視線を上げるとちょうどシュルクと視線が合わさった。即座に逸らす。
「買ってみようかな……」
「それだけはやめて」