お頼み申す!
この街唯一というほどでもないが目的の『アダルトショップ』は人通りの少ない街角にひっそりと佇んである。ミカゲ、マーク、シュルクの三人は近くの電柱の後ろから順に顔を出して。
「先に行きなよ」
「いやここはマークが」
「言い出したのは君だろ」
ミカゲはむっと見下ろして。
「そんなこと言って、先に行かせて退散するつもりじゃ」
「いいからさっさと行ってこい!」
「無慈悲ッ!」
マークに蹴り出されて無惨にも歩道に転がったが刹那鈴の音に顔を上げると漕ぐ自転車がもう目の前。ぴっ、と鳴き声を上げて四つん這いになりながら回避。
「気をつけろッ!」
仕事の時は隊長に引けを取らない冷静な観察力と判断力で淡々と役割を熟すのにプライベートモードの彼ときたら。
「ひゃい! ごめんなさい!」
……言葉にならない。
「ほら」
あわよくば本当に退散してしまおうかとも考えていたがそれも失せた。見るに堪えない情けない姿に小さく溜め息をついていつの間にか電柱の後ろから出てきていたマークが静かに手を差し伸べる。
「か、かたじけない……」
先程の自転車の男の怒鳴り声が効いたのやら涙目に鼻声。シュルクとマークはふっと顔を見合わせ重ねて溜め息。