お頼み申す!
ミカゲは静かに息を呑んだ。
戦利品を手にした戦士達を待ち構える最大にして最強の難関。カモフラージュをいとも容易く解き羞恥を曝け出す冷酷な番人が俊敏な指捌きで文字盤を叩く。
縮こまった背を見送って。立ち竦む次の獲物を視界に捉えて口角を吊り上げた。
「次のお客様どうぞ」
レジ。
「さ、先どうぞ」
はっと我に返ったがミカゲは自分のすぐ後ろに並んでいた男性にレジを譲って。
「あだっ!」
拳骨。
「なっ何をするで御座るか!」
「じゃないだろ! いつまで譲るつもりなんだ!」
ミカゲが購入を図っているのは初めに手を取った単行本ただ一冊。それも表紙がそれほど際どいという話でもないので堂々としていればいいものを中身が中身と知っている以上そうもいかない。
「じ、じゃあ代わりに」
「いいけど、ミカゲはそれでいいの?」
要は気持ちの問題なのだ。
この試練を乗り越えなくてはまた彼らを巻き込む羽目になる……いくら同い年で親しみやすいからといって迷惑をかけていいという理由にはならない。
「……分かった」
決心がついたのかぽつりと。
「買ってくるで御座る!」
「あ、じゃあついでにこれも」
「僕のもお願い」
「おまいらぁぁぁ!」