走れ!真夏のヒーロー!
いくら、妹とはいえ。
「……なによ」
隠すように回したその腕に押さえつけられて柔らかくはみ出した白い柔肌に本能的に目が向かないはずもなく。
ルフレが視線に気付いて顔を上げたのと同時、マークはうーんと唸って眉間に手を当てる仕草をした。ルフレは訝しげに見つめたが、誤魔化せたならよし。
とにかくこのままではルフレがここから動けない。ここまでどうにか頑張って来てくれたまではいいが当然のこと肝心の更衣室付近は人目につく。周りが知っていようがなかろうが、彼女も正義部隊の一員なのだ。こんなあられもない姿を、誰にも見られたくはないだろう。
「ちょっと待ってて」
代わりに僕が取ってこよう。そう思ってその場から離れようとしたその時。
「そこで何をしている」
――まずい!
双眸に赤く灯をともし冷たい声音で訊いたのはなんとミカゲだった。マークが振り向くと仕事モードであった状態を切り替えてきょとんとしたように、
「マーク? それにルフレも……」
「あわわっこっちに来ないで!」
慌てて飛び出したがよく見れば彼はパーカーを着ているのである。事情を話して順序良く、というのも今回ばかりは妹の姿を目に留められたくない一心で。
「へっ?」
焦り募らせながら鷲掴み。
「……ミカゲ! 何も聞かずにそのパーカーを貸してくれっ!」