走れ!真夏のヒーロー!
「あー!?」
とジュニアが声を上げたのはその直後。
「……ん?」
それというのも海沿いを走っていたマックが砂のお城を蹴散らしてしまったからである。あんなに立派だったというのになんとまあ、見るも無惨な姿だろう。
「なんてことをするんだ!」
「お前こそ何をやっていたんだ?」
「バカンスに来てまでランニングしてるような奴に言われたくない!」
マックは疑問符を浮かべて。
「じゃないともったいないだろ」
「脳筋かよ!」
……ぎゃあぎゃあと。
それさえ微笑ましく見守っていたその時背後に影が差して。ロゼッタが振り向いたのと同時飛び出す小さな物体と直後にその物体を打つ派手な音がひとつ。
「チコ……!?」
きゅう、とぐるぐる目を回しながらロゼッタが手放したビーチボールと入れ替わりに抱かれたチコが受け止めたのは振り下ろされた木の棒だった。それを手にした犯人であるモウカは狙った獲物とは異なる手応えに目隠し布を上げて。
「……? チコじゃないか」
「どこ行ってんだよ、モウカ!」
遠くから叫ぶのはパックマンである。
「パックマン右だって言っただろ!」
「ワシは耳が遠いからな」
「難聴かよ!」