走れ!真夏のヒーロー!
パックマンは打って変わってげんなりとした顔で振り返る。
「分かってるよ」
近年。蒼の孤島アクエスでは訪れた旅行者に紛れて女性の水着や下着を盗むといった事件が多発しているらしい。加えて盗まれたそれらの行方は掴めておらず、オークションには出されていないにしても個人による用途を考えるとなると。
……ともかく。今回の自分たちの目的というのはバカンスではなく女性用水着・下着泥棒の特定兼確保。警備が目的ではないので一般人に紛れなくてはならない……そう、あくまで一般人らしく。
「で。そのスイカどうしたんだよ」
一般人らしく。
「そこの売店で買ってきた」
シュノーケルにウェットスーツといった何処に狩り出すんだといった格好のロックマンが脇に抱えているのは見事まん丸とした立派なスイカ。
「何せ今度の依頼は一般人に扮しなければならないからな。なら、一般人らしく振る舞うのが責務というものだろう」
口元に浮かべた笑みが眩しい。
「隊長、楽しそう……」
「海を満喫する気満々ですね!」
ハルとトレーナーが口々に。
「パックマン」
と。声をかけてきたのは着替えを終えて水着姿となったマーク。
「さっき借りた日焼け止め、鞄の中に戻しておいたよ」
「お前は少し焼いた方がいいって」
呆れたように見つめた後で。
「……ルフレは?」