走れ!真夏のヒーロー!
「……え?」
何が起こったのか分からなかった。
振り返った時にはそれはもう目前でその持ち主が指を押し込むとたちまち霧吹きを顔面にかけられて。吸い込んだ甘酸っぱい匂いが頭の奥まで染み渡ると途端に目眩がして僕もシュルクも力が抜けた。それでも辛うじて残る意識を何とか留めながらそっと視線を上げると。
「残念でした」
無慈悲な声が降ってきて。
「こいつら俺のダチなんだよね」
やっぱり。
何となく違和感はあった。こんなにも分かりやすく序で言うなら証拠も残しながら動き回っているのに一向に捕まらない犯人の足。疑りたくはなかったのだが。
この男は警備員と――
「さて」
犯人の男が顎でしゃくると警備員の男が近付いてきた。その男は、マークの腕を掴むと警備員らしからぬ荒々しさで。
「こっちに来い」
「やめろ!」
シュルクも思わず声を上げる。
「俺たちも別に女の水着ばっか漁ってるわけじゃねーんだよ」
影。
「臨機応変にやらないとねー。そういう人も世の中にはいっから」
ざわつく。
「草陰が嫌ならこの場で剥いでやるよ」
シュルクは腕を掴まれた。
「……なぁ?」
青ざめる。
「正義のヒーロー君?」