走れ!真夏のヒーロー!
シュルクはすうっと息を吸い込むと一気に速度を上げた。並んで走っていたのは体力を温存するため。本来はマークより走るのが速いのでシュルクと犯人との距離はみるみる内に縮まった。一方で犯人も接近に気付き程なく情報通り差し掛かったT路地、シュルクが左に並びかけたところ思惑通り右のルートへ。
その先には警備員がいる。証拠を抱えた犯人を挟み打ちにするという寸法で。
寸分の狂いもない。
……見えた!
警備員も当然のこと連絡が回っているのだろう、犯人とそれを追うマークとシュルクの姿を確認すると警棒を構えた。
ここまで来てしまえば。
「捕まえてください!」
警備員は三人いた。
犯人の走る速度が緩まって引き返そうとしたところマークとシュルクが立ちはだかる。おろおろしながら犯人が次に振り返った時には警備員が飛び出していた。
あれよあれよという間に。
「――ありがとうございます」
ようやく犯人を捕らえることができた。
それまでに水着を点々と道路に落としてしまったが無茶苦茶に走ってきたわけではないので、ロックマン達がいる場所に戻りながらでも回収はできるだろう。
「後のことはお任せください」
「じゃあ僕たちは戻ります」
「御協力感謝します」
シュルクもマークも背を向けた。
「そうそう」
不意のその声に。
「……忘れ物ですよ」
振り返る。