走れ!真夏のヒーロー!
……数分後。
「酷い目に遭ったで御座る……」
海の家の一角を借りて治療を受けるのはミカゲだった。施す向かいのドクターはやれやれと息を吐いて。
「全く。まさかここに来てからの初仕事が隊員同士の取っ組み合いが原因の治療とは思わなんだ」
「ご、ごめんミカゲ」
頬にひとつ傷を受けるだけで済んだシュルクは申し訳なさそうに。
「いっいや全然! 気にしてないで御座る……!」
慌ててそう返した後、
「……まさかマークのことでシュルクがあんなに怒るとは思わなかったで御座るよ」
ぽつりと。
「? ミカゲ?」
「いやぁ、あはは――」
「治療中に動くんじゃない」
「あだだだっ!」
意図しない賑やかな光景にマークが苦笑いを浮かべていると、
「兄さん」
ルフレが戻ってきた。
「着替えたんだね」
「ええ。……ごめんなさい」
「どうして謝るんだい」
「私だって正義部隊の一員なのに。浮かれてる隙に敵に先手を取られてしまったんだもの」
マークはふっと笑った。
「……ねぇ、ルフレ。不謹慎だけど僕は今度の件で自分が女じゃなくてよかったと思ってるよ」
「どうして?」
「同じ目に遭っていただろうから」
ルフレは暫く目を丸くしていたが、意味が通じると小さく吹き出して。
「……そうね。同じだものね」
ひと段落ついたところで。
「いた! やっと見つけた!」
飛び込んできたのは。
「パックマン?」
「どうしたんだいそんなに慌てて」
「お前らが冷静すぎんだよ! 説明するから早く外に出ろ!」