走れ!真夏のヒーロー!
……遅いなぁ。
威嚇で一度は追い払われてしまったシュルクも結局のところ影からこっそり二人が消えた茂みを見守っていた。ところがいつまで経っても二人が出てこないので不審に思って出てきたのである。
兄妹間でしか許し合えない事項というものは少なからずあるだろうがそれを目の前でこそこそと行われたのでは気にならないものも気になるわけで。そもそもの話がこれは人間的な本質というか。
「ひいっ! おお、落ち着いて!」
ん?
「引っ張らないでぇぇ!」
何かいきなり騒がしくなってきたぞ、というかこの声……ミカゲ?
ミカゲがいるのに自分が駄目というはずはないだろう。シュルクはさっと茂みに歩み寄り、声をかけつつ掻き分ける。
「さっきから何をして」
「――うわあっ!」
シュルクは小さく目を開いた。
何ということでしょう。
なんとそこには仰向けに転んだマークの上に覆い被さったミカゲの姿があるではありませんか。
「し、シュルク」
それも双方共に水着姿であるのに加えてミカゲのパーカーがはだけている。
「なに、してるの」
「ちちちっ違うで御座るよ、これは!」
どきどきと胸を打つ。
「不慮の事故というか! だから疚しい意味などでは絶対に」
「マークから」
差す影にさあっと血の気が引く音。
「離れろぉぉぉお!」
「違うで御座るぅぅう!」