レッドさん落ち着いて!
つんと香る刺激的な匂いに釣られて。足を進めてみてはテーブルの上の丸い皿の上に並べられた赤みがかかったポフィンを見つめる。ポフィンの食感と似つかないピリ辛風味――どうにも自分はこの味がたまらなく好きなのだ。
「ネロ」
伸ばしかけた手を引っ込めて振り向く。
「レッド」
「忙しかった?」
という口振りからして随分前から待たせていたようだ。
「いや、屋根で寝てた」
「あはは」
「それよりどうしたんだよ、これ」
ネロは辺りを見回す。
「……本当はネロの分だけ作ろうと思ったんだけど」
えっ。
「作りすぎちゃって」
なんだ今の。
「えっと、ネロはクラボの実を使ったポフィンが好きだったよね」
レッドは気にも留めずひょいと皿の上に並べられたポフィンの内一つを手に取る。
「お、おう……」
見張っている間にポフィンを真ん中から二つに割って。
とろりとこぼれるクリームを片割れの端で掬い。
「はい」
レッドは柔らかな笑みを浮かべ差し出す。
「あーんして?」