レッドさん落ち着いて!
……すっかり解されてしまった。
嫌な気はしないんだが流されやすい自分も如何なものか。何せ、浴場でまだ背中を流してもらっていた最中に後ろから肌を密着されつつ囁かれた言葉が――
後で気持ちよくしてあげるね……?
知ってたよ! こういうのは大抵マッサージだって知ってたよ!
そりゃあこいつには普段から世話になってるし普通に、何というかまあ好きだよ。だからといって勘違いしないでほしい。好きとは一概に言っても胸ときめく淡い恋心とはまた違う。本物の家族も同然としての“好き”なのだ。
だからどうしたとでも言われそうだが自分はレッドにこれまでの関係を踏み超える特別な感情を抱いたことはない――確かにちょっと、期待をしてしまったが。
「ネロ、左向いて」
仮に本当にそんな展開になったとしてそれはそれでちゃんとお断りするさ。何せ自分には恋愛的感情を抱く相手がいる。その相手が誰とは言わないが――まだ片想いなのかとか言うんじゃない。こっちも苦労してんだよ、あちらの鈍感っぷりに。
「い、っ」
それにしても。
「ごめん、痛かった?」
流されやすすぎだろ!
マッサージが終わったら耳掻きですかそうですか!
「べ、別に平気」
ちらりと見上げて返すとレッドは微笑んで。
「そっか。ならよかった」