ハツジョウ禁止!リターンズ!
「弾を節約するのではなかったのか」
「今ここで使い切ってもいいんだぞ」
全く。女神の色欲を浄化したところで退室、溜め息。
どうにも。こいつはふざけているのかそうでないのか(どうせ後者八割だろうが)、そういった類いのものに弱すぎる。人がちょっとそれらしい言動を見せれば全力で釣られる奴だ、周りは見ていて面白いのだろうが自分としてはそれがパートナーかと思うと頭を抱える。
能力の優れた人間というのはどうして何処かしら残念なのか。長所に対する短所だといって釣り合いをとったつもりだろうがこれでは長所があまりにも不憫だぞ……
「いいか」
ユウはとある部屋の扉を前にしてリオンに鋭く視線を遣る。
「私が指示を出すまで貴様は此処でおとなしくしていろ」
言えばリオンは「わん……」と返してハートを飛ばすのだから鬱陶しい。
ああ、橙の瞳の中にもハートが浮かんでいる。呆れたように目を細めて小さく息をつくとユウは何の気なしに扉を開いた。
「ブラックホール」
そんな声が何となく聞こえたか聞こえなかったか。
「んなっ」
謎の引力によって有無を言わさず部屋の中へ引き込まれた。同時に扉も派手な声を上げて閉まり、遠くリオンの声が聞こえたような気もするがそれどころじゃない。
舌を打って両の目に金色の光を宿す。――断ち切った。
「やるじゃねえか」
暗闇に妖しく浮かぶは赤の双眸。
「……ブラックピットか」