危険なヘアサロン
現実は非道だ。いつもそう思う。
「うえぇ、ローナってば今起きたのー?」
ちょうど洗面所を通りかかったのはピチカだった。
「あだだだっいだいいだい!」
とまあ肝心のローナはそれどころじゃない。
「……髪。乾かさないで寝たわね」
「そそっその内に乾くじゃないかぁ!」
ローナを鏡の前に置いて後ろに回り込み櫛を手に髪を整えるのはシフォンだった。今日は特別、ではなく今日も変わりなく。傷んだ髪を前にはあ、と溜め息。
「櫛が通らないじゃないの」
「絡まった所だけ切ってくれればいいよ!」
「……いっそのこと坊主にしちゃおうかしら」
「うわわっ、それだけは!」
付き添いのネロがじっと見つめた。
「……そういやぁ髪が伸びたな」
シフォンは鏡越しにローナの髪の状態を確かめる。
「あら本当」
「切っちゃったら?」
「えー美容室なんかでお金使ったら僕冬が越せなくなっちゃうよ」
「お前普段どんな金遣いしてんだよ」
櫛を唇に当てて長考の末。
「……私が切ってあげましょうか」