危険なヘアサロン



シフォンは柔らかな笑みを浮かべた。

「そうね。お姉ちゃんだものね」


……此処に来て。妹はよく笑うようになった。

生まれた時から進化の段階が第二でその後も第三進化の気配はなく。成長の過程も知らないその才能とその先を知れない体質が周りからは不完全であると好奇な目を向けられて。傷付いて、毒付いて、突き放して、遠ざけて。


でも、今は。

その言葉を人と接する為に選んでいる。


……笑っている。


「シフォン」

ネロはふっと笑みを浮かべて訊いた。

「……楽しいか?」

ほんの一瞬、目を丸くして。シフォンは肩を竦めて笑った。

「ええ。とても」


本当の言葉で。本物の私で。

居られる場所だから。


「終わったわよ」
「おおー!」

シフォンはタオルを取り払う。

「何処へ行くのかしら」

ぎくり。

「お前も疲れただろうし飲み物でも持ってきてやろうとだな」
「……ローナ。アクアジェット」
「ぎゃあぁああ!?」

既の所で潤いたっぷりの突撃を回避。

「ふざけんな! 水は使わないって約束だろ!」
「私は、使ってないわよ?」
「こっちに来んなあぁあああ!」


――グループ限定、シフォンの危険なヘアサロン。

様々な御奉仕で皆様の笑顔を約束します。


「兄を殺す気か、お前は……」
「死なない程度に加減はするから安心して」
「悪魔だ……」
「ふふ。ただの妹よ」



end.
 
 
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