危険なヘアサロン
ちょきん、ちょきん。
……しかしまあこうして切られてみる分には普通である。自分たちは少し彼女を疑りすぎたのではないだろうか。鏡が無いので何とも言えないが、下手な真似はしていないということだけは確か。それだけは、互いにちらちらと確認している。
「前髪はどのくらい?」
シフォンはリムの後ろから手を回して前髪を摘まみ、訊ねる。
「そうねぇ……」
――当たっている。
僕だってもう十四歳なのに何なんだこの差は。ローナだってAカップは卒業しましたなんてからかってくるし、もうこうなると遺伝としか思えないわけだけどお母さんは酷い胸囲というほどでもない。にぃにはお母さんの低い身長が遺伝しちゃったみたいだけど、僕はもしかしてお父さんのぺったんこな胸に……そんなの有り!?
「こんな具合かしらね」
「え、ええ」
この時リムも何か思うところがあったのが曖昧な返しだった。
シフォンは気にも咎めず今度はピチカの後ろに回る。
「前髪、どうしましょうか?」
むにゅっ。
「どうしたの!?」
帰ってきたリムとピチカと重たいオーラを背負っていた。
「何も聞かないでちょうだい……」
「あれは、遺伝……そう、遺伝なんだよ……」
ローナは疑問符。
「ま、また何かしたのシフォン?」
「何もしてないわよ」
シフォンは小さく息をついた。