危険なヘアサロン



「いやあぁあああ!?」

悲鳴。

「動かないでちょうだい、切れないじゃないの」
「切れなくていいんですううぅう!」

浴場の中で青の光が煌めくのが戸を挟んでぼんやり透けて窺える。

激しく抵抗しているようだ。

「おにぃ、大丈夫かなぁ」

心配そうにピチカが呟いたのも束の間。


「ぁ」


か細い声が聞こえて音が途切れた。沈黙。……戸が開く。

「おにぃ!」

ルーティが出てくるとピチカは真っ先に駆けつけた。

綺麗にカット&セットを施してもらっている。髪も伸びて重たくなっていたところさっぱりして寧ろ良かったんじゃ。それなのにどうしてこんな浮かない顔、

「……おにぃ」

ピチカはきょとんとした顔で。

「身長、縮んだ?」


その瞬間ルーティの背景に稲光が乱雑に巡った。


「どうせ小さいですよ……」
「ふえええっ!?」

隅っこで膝を抱えて落ち込みだすルーティにピチカは疑問符の嵐。

「そっとしといてあげなさい」

リムはピチカの肩にぽんと手を置く。

「辛い戦いの末、ルーティは大切なものを失ったの。だから今は……」
「そ、そうだったんだ……何もしてあげられなくてごめんね……」
「いやアホ毛切っただけだろ」

ネロはじとっとした目でぽつりと。

「何を言っているの! あれはもう髪じゃない、ルーティ自身だったのよ!」
「おにぃ死んじゃったの!?」
「話がややこしくなるからやめろ!」

ギャグに対し、無駄に順応性に優れているポケモン組。
 
 
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