危険なヘアサロン
瞼を閉じるとカットが始まった。
普通の美容師と違うのはやはり目の前に鏡が無いことか。ここで一睡でもしたら目覚めた時が悲惨だろうな。こんなに自分の髪のことを思うのは初めてだが、変な髪型にしてこないかだけちゃんと見張っておこう――!
「あら。そんなに気張らなくていいのよ」
ただ髪を切るだけなんだから、とシフォンが宥めるが。
……それが不安なんだよ!
「前髪はどのくらい?」
シフォンが髪を摘まんで訊ねる。
「あっ、……眉毛より少し上くらいで」
「じゃあそう切るわね」
案外普通だ。
「……そういえば」
シフォンは不意に鋏で切っていた手を止める。
「貴方、スピカより身長が高いんですって?」
ぎくり。
「ま、まあそういうことになっていますデス」
分かりやすく片言になってしまった。するとシフォンはそれまで切ろうと摘まんでいた前髪を解放してからくるんと片手で鋏を回し、
「年下なのに」
すすす、と開いた鋏の刃で。
「なんでかしらねぇ……」
頭の天辺、ぴょんと跳ねてくるりと巻いたやけに強調する一本の髪を撫でた。