ボク、紹介します!
あつっ、とカービィが手を引いた。
コース料理の牡蠣の身を取ろうとして熱々の貝に触れてしまったらしい。
「そそっかしいな、君は」
既に口へ運ぼうとしていたマルスはじとっとした目をして言う。
「取ってあげようか」
「別にいいし」
また妙なところで意地っ張りな人だ。
奮闘するカービィを置いてマルスは襖の隙間へと目を遣る。
「……あれ?」
マルスは思わず身を乗り出した。
「どうしたのさ」
「パルテナとピットが居ない」
「トイレじゃない?」
「二人で?」
カービィはぴたりと箸を止めてマルスの上から覗く。
……確かに部屋の中には向かい合って座ったロイとブラピの二人だけだった。と、店員が入ってきて少しの間視界が遮られ、退いた頃テーブルの上には空いた皿などと引き換えに二合の徳利が。それをブラピが取って身を乗り出し、猪口を出すようしゃくって促す。どうやら酌をしてやるつもりらしい。
「呑まれるまで飲ませるタイプだよね、あれ」
曖昧な笑みを浮かべて受けるロイを見てカービィはぽつりと呟く。
「早く戻ってやればいいのに」
……腑に落ちない。
「話題もなさそうだし辛いんじゃない?」
何かが、頭の中で引っかかっている。
「乱入しちゃおっかなー」
へらへらと笑うカービィの傍ら。
牡蠣が鉄板の上で小さく音を立てて跳ねた。