災厄の君へ
恐らくは彼のことを指しているのだろうと予想してルーティが振り返った先には知らぬ顔をして椅子に座るユウの姿があった。その傍らにはいつの間にやらリムとリオンの姿もある。
「だから連れてきたのね」
何処か腑に落ちた様子で表情を綻ばせるリムの発言に対してユウは返さなかった。ふと視線を落とせば冷めきってしまったコーヒーの水面に自身の顔が反射してぼんやりと視線を交える。
「ユウ」
今度はリオンが口を開いた。
「どんな未来が視える?」
そうして映り込んだ自分の瞳の奥には。
「知らん」
きっぱりと言い放って目を閉じた。
「視えなくていい」
そっと瞼を開いて紡ぐ。
「……分からない方が面白いからな」
きっとこれまでの彼からは想像も付かないような発言に誰もが表情を綻ばせた。その内の一人たるリオンも柔らかな笑みを浮かべて返す。
「同感だ」
平穏を約束しよう。
その目に映るものが全てじゃないから。
だからどうか憎まないでほしい。
白黒の世界に色が差す日は必ず来るから。
過去を。未来を。
この世界を恨んだ災厄の君へ。
……災厄だった私より。
end.
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