災厄の君へ
「そうと決まったら早速外行こうぜ!」
「浮いてる……」
「脚が不自由なんです」
「じゃーゆっくりいこっ!」
「やっぱりうちの妹は天使だな」
「ゔわっ」
何とも微笑ましいやり取りがゆっくりと遠ざかっていくのを眺めていればこれである。水差す声に振り向けば声の主は案の定。
「スピカ……いつからそこに」
「ついさっきだよ」
じとっとした湿り気のある視線を向けるルーティの傍らでスピカは知ったことかとばかりに普段と変わらぬ態度で腕を組みながら。
「ま。来る必要なかったかもしれねーけどな」
ルーティは目を丸くする。
「ユウ達が来るタイミングが分かってたの?」
「だって見えたからねぇ……」
「ひっ!」
揃いも揃ってなんで死角から!
「くふふ……」
にやにやといやらしい笑みを浮かべるのは本物とは似ても似つかないダークシャドウのダークミュウツーである。偽物たる彼らも当然本物と同じ能力を使えるので偶然か必然か今のこの状況を未来予知して参じたということだろうか。
「そぉいうこったな」
どいつもこいつも!
「ふはッ、イイ声で鳴きやがる!」
いい加減にツッコミが追い付かない。
「慣れろよ」
「慣れないよ!」
次いで現れたダークルカリオが嘲るように言って笑うのを恨めしそうに見つめた後スピカの発言を即座に打ち返してルーティは座り直す。
「ったく」
スピカは小さく息を吐いて。
「……何処まで視えていたんだか」