災厄の君へ



驚いた。……そんなことがあったなんて。

「あのユウがなぁ」

にやにやといやらしい笑みを浮かべながら話を聞いていた様子のドンキーが歩み寄るなり後ろからユウの肩を組んだのは直後のことである。

「おいやめろ」
「ていうかそんな可愛い妹いたんだ」

ふぅん、……へぇえ、とシアをじろじろと舐め回すように見るカービィのその後ろの方でマルスとロイの刺すような視線が巻き込み事故で痛い。

「妹じゃない従兄妹だ」
「大して変わんないじゃん」
「おいくつですか?」
「十八です」

さりげないリンクの質問に対しにこやかに答えるシアにルーティは思わず咽せそうになった。

「……!?」
「今が旬やな──ひぃっ!」

ふざけているのか否かドンキーがにやつきながら言えば、瞬時にユウの双眸が金色に変化を遂げて周囲のテーブルや椅子がふわり。

「冗談やって!」
「今の発言はフォローし兼ねます」

リンクは呆れ顔。

「うふふ」

物珍しい来客に対し変に緊張して畏まっていたある意味新鮮なあの空気感は何処へやらあちらこちらで賑やかな声。シアは釣られて微笑みを浮かべながら憂いの影を落として呟く。

「そう。……」


小片が合わさるように腑に落ちる。

勝てなかった理由。負けられなかった理由。


譲らなかったその理由がここにある──


「……あの」

ふと声を掛けてきたのはピチカだった。

「そ、……その」

シアはきょとんとしている。あの事件で誰より恐怖心を覚えていたのは彼女であるという点はシア本人にも滞りなく伝わっていた。

「なぁに」
 
 
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