災厄の君へ
本来であればそう上手くはいかなかったことだろう。自他共に正義に関して強い拘りを持ちそれを譲らないフォーエス部隊が今回の件について一切の口を噤んで手を引いてくれるという点には驚いたがそれもこれもユウが話していたような関係を取り持つためなのだろうか。
もし自分たちが彼ら正義部隊と関わりを持つ特殊防衛部隊でも何でもなかったとしたら──結果は言うまでもないだろう。例えその相手が民間人であれ情け容赦のない人たちだ。どういった結末を辿るのかは語らずとも目に見えている。……
「、!」
その時である。
大きな物音が響いたのは。
「何だろう」
それも食堂奥の厨房からである。
「またサムスが料理失敗したんじゃねぇか?」
「私はここにいるわよ」
ぎくりと肩を跳ねてファルコが振り返れば腕を組んでじっとりとした温い視線を浴びせるご本人の姿が。引き攣った笑みを浮かべる二人を差し置きルーティは席を立つと急ぎ足で厨房へ向かった。
「大丈夫ですか?」
厨房に居たリンクがそう訊ねたのはやって来たばかりのルーティではなく一緒になって食器を片付けていたゼルダに対してである。ゼルダは胸に手を置きながら「ええ」と答えると徒にその正体を隠す土煙を見つめて。
「い、っつつ……」
聞き覚えのある声がした。
「テレポートも碌に使えないのか。お前は……」
「此方にお邪魔するのは初めてだもの」
「座標は教えたはずだろう」
「もう。そんなに仰るのならおにいさまがやればよかったのに……」