災厄の君へ
……ああ。……分かっていた。
虚勢を張って毒突くのも取り繕うのも。
抱え込んだ先で感情に揉まれて壁を作るのも。
初めから何もかもが。瓜二つで。
それはまるで自分自身を写しているようで──
「……おにいさま」
シアが唖然として見つめる先に進み出たユウの背中があった。リオンと横に並んでミカゲと向き合うその人に暫し気を取られていたがはたと意識を引き戻されたようで拳を緩く握る。
「私を侮辱するおつもりですか?」
浮かべた笑みが引き攣る。
「それとも──こうして芋虫のように這い蹲る姿があまりにも無様で哀れに感じられたから情けをかけてみたくなりましたか」
「こいつは私の身内だ」
ユウはこれ以上の発言を妨げるように。
「……家族だ」
それは。
自身が十数年間焦がれてきた言葉で。
「やめてください」
シアは再び目元に影を落としながら呟く。
「私は」
「責任は私が請け負う」
「そんなことッ」
「言わなくていい」
言葉を遮るように紡ぐ。
「虚勢を張るのはもうやめろ」
嫌。……嫌。
「いやですおにいさま」
シアはか細く震えた声で呟く。
「今更、そんなことをして」
数々の記憶の場面がぱっぱと脳裏に映り込む。
「それじゃ私は」
視界が歪んで透明な粒が落ちる。
「私は……何のために……ッ」