災厄の君へ
思えば。
その選択こそ正しかったのでしょう。
歯車を落とすのならばどちらでも構わなかった。定められた運命に水を差す異端者を退場させればきっと物語は正される。修復される。
そう。
たまたま私が不幸であなたが幸福だった。
あなたが恵まれていて、私がそうでなかった。
生まれた時から決まっていた。
私も。あなたも──
「ミカゲ殿」
その声に。その正体に。
「少し待ってもらえるか」
誰もが驚いた様子で息を呑んだ。
「リオン……」
どういうことだろう。
地面に這い蹲るシアをまるで庇うようにしてミカゲの前に立ちはだかったのはその名の通りリオンである。驚き呆気に取られているのは周囲ばかりではなくそのパートナーたるユウも同じ。
「邪魔立てをするつもりか」
「戦いたいわけじゃない」
「問答無用」
空気の棘がぢくぢくと肌を刺してくる。
「ユウ」
リオンはミカゲの言葉を遮るように口を開く。
「これが貴殿の視た最善の未来だというのなら、その先もあるのだと断言しよう」
ユウは黙っている。
「視なくても分かることから目を背けるな」
はっきりと。
「軽蔑させないでくれ。……ユウ」