災厄の君へ
森林都市メヌエル。
澄み渡った青い空へ向かって空高く飛翔していくアーウィンに向かって大きく手を振った後で胸いっぱいに空気を吸い込む。ぐるりと見渡す限りの緑と都会では得られない澄んだ空気感がいつの間にか懐かしい。そうも帰ってなかったつもりもないが平和を具現化したようなこの場所は長く戦場に身を置いてきた自分にとって、今や逆に落ち着きのないものとなってしまったような気さえする──そうして深呼吸を終えたところで満足したかとばかりにユウが隣に立った。
「何食べたい?」
「お前が言い出したんだ。お前が決めろ」
「じゃあ無難にファミレスにしよっか」
とか何とか言いながらも目新しい店を見つけたら惹かれるんだろうなと自分で思いつつ。
「リオンは食べたいものある?」
「私も食べていいのか?」
「当たり前だよ」
……眺めるだけのつもりだったのだろうか。
「外食なんて久しぶりだな」
「普段は食堂で済ませちゃうもんね」
「リンク殿やゼルダ殿の手掛ける料理はどんな高級料理にだって勝るとも劣らないからな!」
そんな他愛のない会話を傍耳に。
故郷の風を懐かしむ。
「……ユウ?」
先を歩き出そうとしたルーティが振り返った。
「早く行かないと混んじゃうよ」
「私は別に困らないからな」
「またそういうこと言う……」
ユウは小さく鼻を鳴らして進み出る。
「さっさと済ませるぞ」