災厄の君へ



土を踏む音、草を掻き分ける音──騒々しい来客に野鳥や野兎が木や草むらから飛び出すのと同時に姿を現したのは一足先に森へ飛び込んだジョーカーとシュルクだった。不自然に大きく切り開かれた場所に出たが何も見当たらない。きょろきょろと辺りを見回していれば遅れて他の隊員も追い付いた。シュルクは息を吐いて振り返る。

「この辺りだと思う」
「僕もそう思うよ」

マークは頷いた後ルフレと顔を見合わせた。

「なんだよ。何もないじゃん」

ようやく追い付いたはいいが成果らしい成果を目視できない結果に息を吐いてぼやくパックマンにロックマンは目を細める。

「いや」


その予感というものは的中する。


マークとルフレが肩を並べて魔導書を片手に瞼を伏せて詠唱を始めれば一つの大きな魔方陣が彼らの足元に浮かび上がった。魔方陣を模る薄紫色の光はぼんやりとした状態から徐々に光を増していくと詠唱を終えたマークとルフレが魔導書を持つ手とは反対の手を突き出したと同時彼らの前方に同じ形状の魔方陣を展開させて、光の柱を虚空に向かって解き放った。

一行は息を呑む。景色は揺らぎ、透明化して身を隠していたそれが遂にその実態を現した。

「これは」

ジョーカーが呟いたその視線の先には如何にもといった古びた洋館が佇んでいる。向かって正面にある両開きの扉はタダで開いてくれるものか否か残念ながら保証はできない。

「テリー」

ロックマンがひと声呼ぶとその人は前に出た。

「okay!」

自身の拳と拳をぶつけた後。すぅっと大きく息を吸い込んで引いた拳を容赦なく叩きつける。

「──Buster Wolf‼︎」
 
 
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