災厄の君へ
リオンは一笑して正面に向き直った。
「あまり手加減するのは得意ではないのだが」
そうして構えれば波動が漲る。
「善処しよう」
……勝算はあった。
けれどそれはおにいさま以外の戦士を全て洗脳にかけて味方に付けていたらの話。一人一人の特性特質を予め調べ上げた上で的確に確実にそれが必然となり得る形でボールに捕らえて洗脳にかけ手中に収めたつもりだったのに──どう足掻いても予測は予知を上回れないというの?
「嘆かわしい」
シアはぽつりと呟いた。
「……シア」
ユウは睨みを利かせながら腕を下ろす。
「どうしても私の邪魔をするというのですね」
「そのつもりだ」
気付けば彼女が口元に浮かべていたはずの笑みは失せていた。不服や不満を体現するかの如く固く口を結んでユウを睨み付けていたが。
「分かりました」
諦めたかのように目を伏せて。
「でしたら。……私も」
語りながらゆっくりと視線を上げれば。
「──本気で参りましょう」
まるで青い宝石のようなネオンブルーの瞳に淡い光が灯れば呼応するかのようにシアの周囲を丸く半透明の桃色の防壁が囲った。そうしてゆっくりと高く浮かび上がればユウも時を同じくして瞳を金色に瞬かせて自身の周囲に丸く半透明の藍色の防壁を展開させる。
「……地上は私が引き受ける」
何を言うより先にリオンが答えた。
「安心して行ってきてくれ」
「お前に言われるまでもない」
ユウは眉を顰める。
「……すぐに終わらせる」