災厄の君へ
重なる。交える。
確立された未来を違えるのだとすれば。
今。
「……ふふ」
各々の放った攻撃の全てによって引き起こされる爆発に建物全体が揺られて。薄笑みを湛えていたシアは立ち込める黒煙を見守っていたが。
「、!」
突如として黒煙を突き破って放たれた青色の光の球に僅かに目を開けばすかさずシフォンが蔓の鞭を払ってそれを弾き返した。弾き返されたそれは結果として天井に激突して爆発を引き起こす──シアは浮かべた笑みを失せて訊ねた。
「貴方は確かに捕らえたはずだわ」
黒煙は依然として黙々と立ち込めている。
「なのにどうして」
「貴女の後学の為にも忠告しておく」
次の瞬間。
黒煙は覇気によって弾かれる。
「──この私に。洗脳や催眠等といった小細工は通用しないぞ」
リオン・ヴィオレスタ──!
「来るのが遅い」
ユウは呆れたように小さく息を吐いた。
「そんなことを言って」
途端、リオンは守るように背にしていたその人を振り返ると普段の調子で頬を染めながら。
「寸止めをご所望だったのだろう……!?」
「貴様と一緒にするな」
興奮に喘ぐリオンを鋭く睨み付ける。
「さっさと馬鹿どもを黙らせろ」