災厄の君へ
急ぎではない為か比較的ゆったりとした操縦であるお陰か触れる風が心地いい。怖がったり嫌がったりする人も少なからず居るけれど特に天空大都市たるレイアーゼから地上界へ降りる時に見られるこの景色はプレゼンしたい程に絶景だ。まさか無理に克服しろとまで言えないがそれでも色んな人に見せたいとすら思う。……
「ご飯食べたらさ」
「帰る」
「まだ何も言ってないよ」
即座に返すユウにルーティは苦笑いを浮かべる。どれだけ家に帰りたくないんだ。
「……お父さんの墓、見に行かない?」
それを聞くと反応したのはリオンの方だった。
「ラディス殿のお墓か?」
「うん。前に来てから暫く経つだろうし」
「いいなぁ」
フォックスが羨ましそうに呟く。
「付いてくればいいのに」
「短気だからな」
「大変だね」
「パートナーの方じゃなくて」
色々あるらしい。
「ルーティ殿さえ良ければ是非」
「僕は大歓迎だよ。お父さんも喜ぶだろうし」
リオンは尻尾を振りながらユウを振り返る。
「ユウは?」
それを聞くと一瞬言葉に詰まった後で、
「……飼い犬を野放しには出来ないからな」
ああ、成る程。
素直とは無縁である彼が自ら付き添いたい等と言えるはずもない。それを見越して自分がまず興味を持ったかのように振る舞うことによって便乗しやすい流れを作ったのか。
「ふふ」
普段の振る舞いからは凡そ想像もつかないものがあるが意外と紳士だったんだな。
「やはりユウはツンデ」
「五月蝿い」
「あぁんっ落ちないことを考慮した控えめな抵抗ジャスティス……」
うん。……意外と。