災厄の君へ
シアは指先を合わせて笑った。
「流石です。おにいさま」
目を細めて紡ぐ。
「でも」
シアが目を向けた先には捕らえたルーティとミカゲを見張るルルトとラッシュの姿があった。嫌な予感が過ぎってユウが其方に目を向ければルルトとラッシュは受けたアイコンタクトに従うようにしてそれぞれ電気と炎を帯びた手をルーティとミカゲに向けたのである。突如として刃を当てがわれた彼らもぎくりと身を竦めたものの残念ながら逃げ出せるような状況ではない。
ユウは顔を顰めて舌を打つと放たれた攻撃を躱すついでなのか否か空間転移を使って姿を掻き消してルルトとラッシュの背後に現れた。気付いた二人が振り向きざま抵抗を示すより早く念力で動きを封じ込めた後、眼力を込めて力強く弾き出す。油断も隙もないなと息を吐き出しながらユウは人質となっていた二人の前に出ると笑みを浮かべるその少女を鋭く睨み付けた。
「、は」
血飛沫が紙吹雪のように舞ったのは。
その直後のことである。
「あーあ」
崩れ落ちるユウにぽつりと零したのは。
「気が早いんだから」
まさか──!
「悪の芽を摘み取るのに時間は掛けられぬ」
真新しいばかりの赤々とした血が付着した鋭利な武具を軽く振るって構え直す。
「それが。我が正義部隊の"正義"なのだから」