災厄の君へ
相性の良し悪しだの、多勢に無勢だの。
巫山戯たことを抜かしてくれる。
一体、誰だと思っている?
この私の強さが。
──固定概念で語れると思うなよ。
「っはあ、」
一人の少女は息を吐き出して苦笑を浮かべる。
「言うだけのことはあるね」
頬に受けた傷に滲む赤を拭いながら。
「出まかせじゃなかったんだ?」
立ち込める砂煙が次第に晴れればその中央には一人の男の姿があった。まるで獣のような金色の光を宿した双眸にまさか温もりを感じられるはずもない。その彼を囲うように構えた少年や少女らは傷を負ったり息を浅く弾ませているというのに対するその男は無傷ときたものだ。
「当たり前だろう」
その男──ユウはふんと鼻を鳴らす。
「貴様ら程度。束になってかかったところで私に言わせてみれば造作もない」
そうして豪語するだけの実力が確かにあった。
「続けるか?」
冷たく見据えて吐き捨てる。
「……無意味だぞ」