災厄の君へ



電気が走るような感覚──脳裏に要所要所を切り取って繋ぎ合わせた継ぎ接ぎのような映像が流れ込んできて双眸は紅に染まる。緋色の尾を引きながら振り向いて水を纏った突進に加えた蹴り払いを受け流すまでは予知通り、直後の炎の柱による追撃は透明な防壁を瞬時に発生させて阻んだが休む暇なく足首に絡み付いた蔓に力強く引かれるがまま体は浮かされて宙に放り出される。

放たれた木の葉の群れは余さず視界に捉えれば念力が働いてその全ての動きを封じた。背後から迫る気配に振り向いて拳を腕を構えて受け止めたが絡み付いたままであった蔓に再び引き寄せられ地面に叩き付けられる。砂埃が舞い上がり万事休すといった盤面を覆すかの如く一帯を覆う砂埃は波紋のように打ち出された見えない力によって弾き消されその中央には一人の男が浮遊する。

「ユウっ!」

名前を呼ばれて視線を遣った先に居たのはルーティとミカゲだった。双方腕を後ろに回された上で拘束されているらしくその上で見張り役と思しきルルトとラッシュが両脇に待機している。

「気を付けてっ、彼らは!」

ユウは視線を戻して目を細めた。

「洗脳か」

ただでは終わらないものだとは思っていたが──小さく呟いたのを合図とするかのように暗闇ばかりが広がっていた一室の埋込型の照明器具が点灯してその全貌を明らかにする。


「大正解です。おにいさま」


部屋の端には幾つもの円筒が立ち並びそのどれも薄緑色の謎の液体が浸されている。何処かの研究施設であるかのような造りの趣味の悪い一室に響き渡った声に振り向けばお馴染みの少女が指先を合わせて笑いかけた。

「さぁ。……私のお友達と遊びましょう?」
 
 
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