災厄の君へ
まさか予約していた飛行機をキャンセルしたという話ではない。同じくメヌエルに降りるメンバーに荷物を預けてアーウィンで帰省する予定だったフォックスにお願いしたのだ。
「無理を言ってごめんね。フォックス」
「そうでもないさ」
ルーティがきょとんとして見つめていると。
「ファルコと一緒に帰省しようとするとレースみたいになるんだよ。あっちは結構その気だけど、やっぱり気が張るというか──理由付けて帰省のタイミングずらせたのは助かったよ」
血が騒ぐってやつなのだろうか。
「でも、楽しそうだね?」
「エースパイロットの腕を見縊りすぎだぞ」
フォックスはアーウィンに乗り込む。
「強いんだね」
「おまけに負けず嫌いなんだ」
あれ? ルーティは話の相違のようなものに気付いて恐る恐ると。
「もしかしてその勝負に勝ってるのって」
フォックスは操作しながら苦笑い。
「三連勝中」
スターフォックスのリーダーは侮れない。
「よし」
準備が整ったところで少し遅れて屋敷から出てきたユウとリオンもルーティが手招きをすると従うように中庭に停められていたアーウィンの左翼に飛び乗った。バランスも考えてルーティが右翼へ移動すると同時にいよいよ離陸する。
「忘れ物はないな?」
「問題ない」
「はは。そっか」
フォックスは操縦桿を握る。
「……行くぞ!」