災厄の君へ
──不意に会話は中断される。
リオンは目を開いた。
「ユウっ!」
、は……?
「うふふふふ」
少女は笑う。
「だから、失うのよ」
あざとく肩を竦めて笑う。
「おにいさま」
何が、起こった?
「貴様……!」
ユウが睨み付けた先に居たのは。
紛れもない──少女シアの姿だった。
「だぁめ」
咄嗟に伸ばされた手を躱すようにシアは後方に空間転移してから手のひらを招くとそれに従って接近してきたミュウツーボールをその両手の中に収めた。ユウは思わず顔を顰める。まさか、自分の後方に迫っていたそれに気付かなかったなんて──いち早く気付いたリオンがすかさず飛び込む形でそれを阻んだが当然のこと犠牲が付き纏う。今しがた彼女が受け取ったミュウツーボールの中にリオンは捕らわれてしまったのだ。
「返してほしい?」
シアはふわり浮遊しながら首を傾げる。
「どうして?」
口元には薄笑みを湛えているのに。
青く澄んだその目は──
「私。おにいさまの大切なものを奪った、なんてつもりはないのよ」
……だって。シアは続ける。
「いらないから突き放すのでしょう?」