災厄の君へ



棘のように鋭く。氷のように冷たく。

尖った振る舞いでは他の誰とも打ち解けられないというのに辛く突き放すように。わざと遠ざけるように。彼は特別人と馴れ合うことを嫌う。

彼を取り巻く環境を見ていれば分かるのだ。それこそが彼なりの優しさであるのだと。

「どうだろうな」

自嘲するように小さく笑って振り返った彼は。

確かに。憂いを帯びていて。


不器用という言葉が。

まるで彼の為にあるかのように思えた。


「手に掛けるという判断はまだ早いと思う」
「何故そう思う」
「肉親であるからに他ならない」

ユウは小さく息を吐くと、

「忘れたのか」

腕を組みながら。

「過去に貴様がその力の制御を失った際、身内が何の迷いもなく処分を提案してきた事実を」
「その時とは状況が異なる」
「変わらない」

ユウはきっぱりと言い放つ。

「あれだって立派な暴走の一種だ」

それを聞くとリオンはほんの少し眉を寄せた。

「止めないのか」

ユウは黙っている。

「肉親なのに」
「だからこそだ」

ほんの少しの沈黙の後。

リオンはゆっくりと口を開く。

「あの時と状況が変わらないというのなら」

緩く拳を握りしめながら。

「今度は、私が──」
 
 
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