災厄の君へ
息を切らせて哀れに。地を踏み締めて無様に。
「あははっ」
──なんて愉快な光景かしら!
「!」
踊り場で見えない椅子に腰を下ろしているかのように浮遊しながら足を組んで嗤う彼女に死角から拳による一撃をお見舞いしたのはリムだった。既の所で薄青色の防壁に阻まれてしまい直撃まではしなかったが不意は取れた。
「よそ見なんてしてて良いのかしら」
すぐには拳を引かず寧ろ体重を乗せて押し切ろうとしながらリムは問いかける。
「ふふ」
目を細めて彼女は笑った。
「同じ言葉を御返しします」
ハッと目を開いてリムが飛び退くより早く波動弾がミュウツーボールの突進を弾いた。素早く目を遣ればリオンも二発目を放つべく構えたが気配を察知してすかさず退避。
「そのボールは主たる私が信号を送らない限りそれこそ際限なく地の果てまで対象を追尾する──加えて攻撃の全てを無効化します」
シアは足を組み直す。
「無茶苦茶だからこそ歴史に深い爪痕を残した、忌むべき代物──そのレプリカです」
リムはミュウツーボールの突進を躱して、
「レプリカ?」
「ふふ。ご安心を。だからといって過去の遺物と性能は大差ありません。……故に」
ミュウツーボールは群れを成して襲いかかる。
「あなた達は"必ず"敗北する」
リムとリオンはお互いに背中を預けながら片時も油断ならない状況の中拳を振るい蹴りを見舞う中シアは口元に手指を当てながら笑う。
「いつまで続くかしら」
桃色の髪が揺らぐ。
「言ったわね」