災厄の君へ
対するピチカは一瞬踏みとどまった。
「リムっ!」
パートナーである彼女を置いていけない。
「、ピチカを頼んだわよ!」
声に気付いて尻目に視線を遣ったが当然のこと呑気に会話を交わしている余裕はない──無理に引かずに言葉を待って視線を投げかけるスピカの姿を見つけて此方の体力の続く限りより多くのミュウツーボールを得意の物理技で打ち落として食い止めることを選択したリムは声を上げる。
「行きなさい!」
スピカはルーティと視線を交わして深く頷くと全速力で駆け出した。今度こそ抗わずそれでも走りながらピチカは涙目で振り返る。
「お願いっ……負けないで……!」
一方でエントランスホールから他の誰より早く離れて通路を駆けていたのはネロ、シフォン、ローナの三人だった。容赦なく次々と襲い来るミュウツーボールを水鉄砲や蔓の鞭といった得意技で打ち落としながらあてもなく進んでいくがシフォンに限っては激しく動き回ることを想定していない和装とだけあってどうしても都度都度他二人との距離が空いてしまう。
「足手纏いにはなりたくなかったのだけど」
シフォンは表情を沈めて呟く。
「僕たち、どんな時だって一緒でしょ!」
「いざとなったら抱えていってやる」
ローナとネロが口々に言えば安心したように。
「……ありがとう」