災厄の君へ
天空大都市レイアーゼ──中央司令塔、四階。
「……ふむ」
第四正義部隊フォーエス部隊の隊長を務める男ロックマンは通話を試みるも一向に応答を得られない端末をいい加減に耳から離して見つめて小さく息を吐いた。たまの帰省もそりゃもちろん悪い話ではないがあれだけ連絡だけは怠るなよと話しておいたのに三人が三人共音信不通とは──家族や友人との再会に夢中になってるだけならいいが。
「まだ出ないの?」
パックマンはデスクの上に座りながら聞いた。
「考えすぎじゃない?」
「隊員の安全を考慮するなら"過ぎる"等という事はないさ。これも隊長の勤めだからな」
ふぅん、とパックマンは呟いて。
「安全第一ヘルメットの方が似合いそー」
「たまのおしゃれにはいいかもな」
「勘弁しろよ」
なんて話していた矢先。
「隊長」
扉を叩いて入室してきたのはブルー。
「お前まだ帰省してなかったのかよ」
「そのつもりだったんですが」
何処か重い表情である彼女が手にしているのはお馴染みノートパソコンである。
「これを見てください」
怪訝そうに歩み寄り画面を覗き込むロックマンに続いてデスクの上から降りたパックマンが一緒になって画面に注目する。
「……これは?」
「SP隊員の端末には発信機の機能が備わった特殊なアプリをインストールしてあるんです。そうは言っても普段は悪用されない為に電波の発信を自主的に切っているんですが」
ロックマンは腕を組みながら見入る。
「……つまり?」
「何かあったからその機能を自主的にオンにして居場所が表示されてるってことじゃない?」
ノートパソコンの画面に映し出されているのは所謂世界地図である。点滅する三つの光は同じ場所に集中していてブルーが拡大してみるとそれはどうやらメヌエルではなくその遥か北に位置する大森林の中にある建物の中のようで。
「……あれ」
パックマンは眉を寄せる。
「なんでそんな所に」
言うや否や──光の一つがふっと消えた。
「は?」
「何かあったな」
ロックマンは顔を上げる。
「ブルー。詳しい位置を割り出してもらえるか。緊急を要する事態だ、急ぎ調査に向かわせる」
「……はい!」