災厄の君へ
……それって。
本当はものすごく辛いことなんじゃ……?
「……そうなんだ」
頭の中ではそう思っても流石にこればかりはルーティも口に出さなかった。後ろで誰かさんが目を光らせているというのもそうだが何より彼も同情してほしくて語ったわけじゃない。その判断が正解だったのか否かそれ以降はこれといった会話もないまま一行は程なくしてエントランスホールと思しき広い場所に出る。
「ねえ! 扉があるよ!」
ピチカが声を上げると皆がそれに注目した。
「それはいいけど開くのかね?」
「罠とか仕掛けられてねぇだろうな」
ローナとネロが口々に言う中真っ先にその扉へと歩みを進めたのはミカゲである。
「、どうなんでい?」
例えば扉に手を掛けた途端毒針が突き出さないかそこまでは許されても開けた途端に仕掛けが作動して爆発とか──様々な可能性を考慮しつつドアノブを捻って押したり引いたりと確かめてみたが扉は終始無言で立ちはだかるだけ。ミカゲは手を離して振り返るなり小さく首を横に振る。
「開かないで御座る」
「退いてろ」
頬に黒の閃光を迸らせて。
「ちょ──」
誰かが止めようとするのも聞かずスピカは全身に電気を帯びながら助走を付けて低く跳び上がると脚に一際強い電気を纏いながら回し蹴りを扉にお見舞いした。けれど驚いたのはその後で大抵のものは吹き飛ばされるその攻撃を一体どんな不可思議な力が働いたのやら巻き起こった煙が晴れても尚扉は傷一つない無傷の状態だったのだ。
「、ちっ」
スピカは後転して着地。
「野蛮なひと」
「──!」
目を開いた。
「よっぽど力が有り余っているのね」