災厄の君へ
原因、か。……
何もしなかったってことかよ。
「激しい憎悪と嫉妬心」
答えたのはユウではなくリオンだった。
「覗いたの?」
「いや」
ルーティの質問にリオンは小さく首を横に振る。
「覗くまでもなかったと言った方が正しいか」
おにいさま。
どうしてそんなにも恵まれているの?
地位や名誉だけに飽き足らず。
そうやってシアを愚弄しようというのね。
羨ましい。妬ましい。……許せない。
許せない許せない許せないッ!
「逆恨みかよ」
スピカは呆れ果てた様子で吐き捨てるように言ってボロボロのソファーの上に腰を下ろすと同時に腕と足を組んだ。
「だからって俺たちまで巻き込むことないだろ」
「そ、そうだよ……」
ピチカは眉尻を下げて賛同する。
「それにユウの従兄妹さん、こわいし……」
「また後でって話していたわよね」
その傍ら。リムはすっかり怯えた様子のピチカを優しく抱き寄せて頭を撫でながら口を開く。
「何とかしなさいよ」
「分かっている」
聞かなければ。……その時は。