災厄の君へ



未来を視る目。心の中を透視する目。

"災厄の目"と称されるそれを持つ二人は、こういった長期休暇の機会があっても帰省しようとしないし任務で近くを立ち寄ることがあっても足を運ぼうとしない。人様の事情に首を突っ込むべきではないのだろうが一応は後輩の枠であるロックマンが隊員全ての情報を把握して管理しているのを見ると自分もリーダーとして歩み寄り理解するべきなのではないだろうか、なんて──

「皆、急いで!」
「飛行機の時間に遅れるぞー」

腕時計を目に慌てるルイージに反して呑気な声でマリオが言えばキャリーケースを引きながら各々「行ってきます!」なんて口々に。次々と。

「ルーティ」

フォックスに肩を叩かれたルーティはそれでも尚最後までユウに視線を残しながら。ひらひらと手を振るリオンに釣られて手を振り返しながら帰省組の列に加わると。そのまま。


賑やかな声を断ち切るように扉が閉まった。


「……ユウ?」

帰る家が無いわけじゃない。

正直な話。自分が帰ったともなれば家の連中は大袈裟に歓迎してくれることだろう。……無論その心の中で扱いにくさを苦く感じながら。

「、……」

心の中を透視するという自分のこの能力は意識を集中させることで読み取った言葉の羅列が声となり頭に響くというルカリオの種族なら基本誰しも持っているもの──けれど自分は幼い頃から特別その力が強すぎた為両親によって与えられた特殊な作りの黒の鉢巻を目隠しのように用いることによってその力を抑えていた。

とはいえ。人の心の声というものは負の感情に近ければ近いほど聞こえやすい。意識をしなくとも筒抜けのようなもので流れ込んでくる。

今のだってそう。


本当。

私のパートナーは隠し事が下手だな。……
 
 
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