災厄の君へ
縦長の窓のすぐ外で木が生い茂っていることからこの突然現れた建物が森の中にあるということは確かだった。恐らく最初の森もこの建物も実際に存在している場所──彼女自身の力を使って空間転移させているだけ。それ自体は豪語しているようにミュウの血を色濃く受け継ぐ宗家の彼女なら造作もないことなのだろう。……
「おい」
すぐに探索の為に動き回るのは危険だということでルルトとローナに使った解毒剤の効果が出て、ある程度回復するまで待機しようという話になり各々で体を休ませていたその時。
「あいつは何なんだよ」
ユウに声を掛けたのはスピカだった。
「すげー目の敵にしてたけど」
似た質問の連続に小さく息を吐きながら。
「知らん」
「知らないで済むのかよ」
「そういう問題じゃないでしょう」
シフォンは鋭く睨みつける。
「命を弄ばれたのよ」
「やめろって」
ネロが口を開いた。
「貴方……ローナがあんな目に遭ったのに」
「それで身内の味方につくってなら話は別だけどそうじゃないだろ。どう見ても」
そこまで話すとユウは鼻を鳴らした。
「首を刎ねても構わないと?」
「いや別にそこまでは」
ミカゲが訊くとスピカは眉を寄せた。
「……とにかく。原因は分かってるのかよ」