災厄の君へ
「なっ」
木々を巻き込む大爆発──そう、シアの躱した水手裏剣がその後方で爆発したのである。
「……おい!」
激しく燃え盛る炎と立ち込める黒煙を前に音もなく着地して短く息をつくミカゲに続けて着地したスピカは足早に歩み寄りながら声を荒げる。
「お前、何やってんだよ!」
「水手裏剣の中心部に様々なタイプの術を込めて化学反応を引き起こし爆発させた──」
「そうじゃねえだろ!」
「──此れの事で御座るか」
振り返らないまま挙げた手のひらには注射器。
「抜かりは御座らぬよ」
そういう問題でもないだろうに──この点は仲間の命を引き合いに出した相手側に非があったものと言わざるを得ないだろう。暗殺も兼任している正義部隊の一員たる彼が一度悪と判断を下した彼女相手に幾ら先輩部隊の身内だと話したところで躊躇いなどあるはずもなかったのだ。
「やったのか?」
程なくして他のメンバーも追いついてきた。
「ローナは大丈夫だよね?」
「ええ。……これで」
目に涙を浮かばせて見上げるピチカに頷いて答えながらシフォンはローナを背負ったネロの元へ。
「お前さんありゃ大丈夫なのかい」
「敵に情けなど無用で御座るよ」
そんな会話を傍らにユウは炎を見つめる。
「ユウ」
リオンが呼びかけた。
「分かっている」