災厄の君へ



四方八方から襲い来る雷撃、水で生成された武具──その全てをひらりひらりとまるで蝶が舞うかのように躱して飛行を続けるシアにスピカは眉を顰めて舌打ちをした。その内に追いついてきたルーティもスピカと一度視線を交わすと更に速度を上げてシアの斜め後ろまで迫ったが次に木の幹を蹴り出し電気を纏いながら繰り出した蹴り払いも空間転移によっていとも簡単に躱されてしまう。

「うふふっ」

空中で身動きの取れないルーティの。目と鼻の先まで顔を近付けて微笑。

「、あら」

次の瞬間死角から振るわれた蔓の鞭がシアの周囲に浮かんでいた注射器の内一つに巻き付いて奪い去った。いつの間にか接近していたシフォンは鞭を大きく振るい注射器をその手に回収してシアを冷ややかに見つめた後距離を取る。

「お上手なのね」

目を丸くして呟けば。

「もう一方の解毒剤も頂戴致す!」

そんな声が聞こえた先に一瞥くれた後シアは空間転移を使ってルーティから離れる。

「!」

移動先を読んでいたかのような一振り──ミカゲの振るった水苦無は既の所で首を反らしたシアの髪の毛を掠めるだけに留まった。以降は振るえど蹴りを繰り出せど捕まらずシアは目を細める。

「あなたってとってもしつこいのね」

言葉を返さず腕を引いたミカゲの掌の先で生成された水が大きく渦を巻きやがて巨大な手裏剣を模った。そのまま、水飛沫を引き連れながら腕を振るい手裏剣を投げ付けるもシアはほんの一瞬空間転移の要領で姿を消すことで手裏剣を躱す。二番煎じと息を吐いたが刹那。

「下がれ!」

ミカゲは次に足場にした木の幹を蹴って後退しながら後方のルーティ達に呼びかけた。そうして呼びかけながら二度三度印を結んで技を発動する。──次の瞬間。
 
 
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