災厄の君へ



……毒!?

「あはは……どーりで……」
「くそっ喋るな!」

苦笑いを浮かべながら倒れかかるローナをすかさずネロが抱き止める。恐らくも何も遅効性の毒なのだろう効果が出た途端に回りが早い──此方が眠っている間に仕込まれたか。

「ローナぁ!」
「貴女よくも私の妹を!」
「何が目的でこんなことを!」

シアは目を細める。

「だから提案をしているのに」
「ただの遊びで人を手に掛けようってのか」

スピカが鋭く睨み付ける。

「うふふ。まさか。大切なお友だちを見殺しにはしないでしょう?」

指先を合わせながら薄笑み。

「ね?……おにいさま」

ユウはぎり、と奥歯を噛み締める。その様子が酷くお気に召したのか否かシアはくすくすと笑うと両手を広げて掌を上に向けた。程なくそれぞれの手のひらの上に光の粒子が渦を巻きながら集まりそれが白い光の玉を形成すると弾けて──透明な液体の入った注射器が二つ姿を現す。

「解毒剤です」

聞くより早くシアは答えた。

「御二方を助けたいのであれば」

語る最中注射器はたちまち青白い光の玉の中に閉じ込められるとシアの周りを円を描くように浮遊して。シアは人差し指の側面を唇に当てると肩を竦めて続ける。


「──私をつかまえて」


言うや否や両手を後ろに回して組みながら数メートル後方へ空間転移。駆け出すミカゲを見てシアは目を細めると背中を向けて木の間を抜けながら逃げ出した。

「追いかけよう!」

ルーティが言うとスピカは頷いて同時に。

「くそ、」

ユウは顔を顰める。

「行くぞリオン!」

それまで自身の首後ろを気にかけるように触れていたリオンは小さく肩を跳ねて。

「、あ……ああ。……」
 
 
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